5月のお薦め芝居

by中西理





 締めきりぎりぎりで風邪を引いてしまいまたもや遅れてしまったお薦め芝居原稿だが、連休中までは4月の分でカバーしてるので、勘弁してくれ。LED「彼女が死んだ夜」、いるかHotel「花火みたい」、弘前劇場「三日月堂書店」と充実のラインナップが続いた先月分に比べても今月は注目の公演がめじろ押しで今から楽しみなんである。先月の芝居ではこの他、あきらめていた新感線もある人の好意によりチケットを譲ってもらうことができ見ることができた。この辺の芝居については下北沢通信HPにおいおい感想を書いていくつもりなんで、興味のある人は覗いてみて。


   演劇のページの★表では手違いで私の票は漏れてしまったようなのだが、だれがなんといっても猫ニャー、MONO、トリのマークといった私のお気に入り劇団を押さえて今月のイチ押しはむっちりみえっぱり「インディアナポリス」★★★★なのである。本当に人に薦められるのかといわれると「うーん」というとこもあるのだけど、とにかく今、私が一番見に行きたい劇団であることだけは間違いない。この女の子劇団、いまや小劇場界のプッチモニともいわれ(だれに?)、インターネット演劇大賞の最優秀新人賞も受賞(なんの権威が?)、一昨年、ガーディアンガーデン演劇祭の最終選考会で落ちたので、今年こそと思っていたのだけど、ひと足先に見られることになり、この機会逃すべからずである。

 公演場所が銭湯の宴会場で、公演の後、そのまま宴会までついているというのがいったいどんなことをやるんだろうと気になってるのだけど、私が行きたいのはだれかと違ってけっして、宴会で劇団の女の子たちと仲良く成りたいなどという邪な気持ちではない……いや、正直にいえば少しはあるけどけっしてそれだけではないのを分かってほしい(笑い)。本当なんだってば。



 さて、女性劇団の公演といえばげんこつ団「バカ 1990〜1999」★★★★もそうなのだけど、女の子劇団というにはちょっといろんな意味で……。(笑い)。一応、一部のネット演劇人の間で人気の笠愛とかアイドル系(?)といえそうなキャラクターもいなくはないんだけど。これはげんこつ団版の90年代ベストアルバムってところなんだろうか。メンバーの入れ代わりなども相当あったのだが、最近の女優陣の充実ぶりからいってここで総集編をやるっていうのは作演出の吉田衣里は現在の体制に自信があるってことなんだろう。それだけにどれだけのものに仕上がってくるのか期待大である。


 私の煩悩によりむっちりみえっぱりには負けてしまうがMONOl「錦鯉」★★★★が今年上半期を代表する注目の公演になりそうなのも確かなのである。分かりやすいエンターテインメント性がある上で、劇団としてのオリジナリティーの高さが光るという意味で、MONOはここ1、2年の間にブレークして、一時期の東京サンシャインボーイズのような存在に化ける可能性を持っていると考えている。

 作演出の土田英生がなんと夏には吉田日出子、渡辺えり子という凄い顔合わせの芝居に新作戯曲を書き下ろすなどいまやメジャーへの道を駆けのぼっていることもそうだが、MONOの面白さは土田をはじめ水沼健、金替康弘ら俳優のアンサンブルにある。心地よいテンポ、絶妙の間。これが土田戯曲の本当の味わいはMONOを見ないと分からないといわれる所以で、まだ見たことののない人は一度自分の目で確かめてほしい。

 昨年、上演された「−初恋」は旧作の再演だったが、今回は新作だけに期待度は一層高まる。今回は田舎のヤクザが自らのアイデンティティーと誇りをかけて立ち上がるという話らしいが、「錦鯉」というやる気があるんだかないんだか分からないような投げやりなタイトルから見ても絶対に手にあせにぎる大スペクタクルにならないことだけは保証できるだろう(笑い)。 



 人を喰った題名といえば猫ニャー「夜の墓場で運動」★★★★もそのやる気のなさそうなところがMONOといい勝負かもしれない。私、実は途中まで、この芝居の題名は「夜の墓場で運動会」だとばかり思っていて、「会」がないいかにも語呂の悪そうなのが題名だと知った時、思わずさすがブルースカイ、なんというセンスと絶句したのである。猫演劇フェスはフェスティバルという枠組みをとことん利用して猫ニャーならではの快感を存分に見せてくれたが、はたして今回はどうなのだろうか。

   



 利賀の新緑フェスティバルには結局行けずそれだけが先月の心残りだったのだが、ク・ナウカ「王女メディア」★★★★が今度は静岡の野外劇場で上演される。以前、アサヒスクエアで上演された演目だが、野外ということで今回はまた全然違った趣の舞台になるはずだ。これも行けるかどうか分からないのが悩みではあるのだけれど。


 平田オリザの1年ぶりの新作青年団「ソウル市民1919」★★★青年団「ソウル市民」★★★の2本立て公演が今度は世田谷で上演されるのも注目である。ただ、これは先月も書いたことだけど「バルカン動物園」の後、どうするのかが見たいとこのところずっと思ってきたので、「ソウル市民」の続編というのにはちょっと違和感もなくはない。前作で市民運動の崩壊を描き出して、静的な日常描写に終始しがちな「関係性の演劇」に感情の爆発など動的な要素を挿入したが今回の続編で「ソウル市民」とはフェーズの違う「関係」を描き出すのかに注目していきたい。




 トリのマーク「とおくにいるさかなから」★★★★、 トリのマーク「木陰で話をするときは」★★★★もお薦めの公演。特に表参道の美術書店ナディッフで上演されるという前者は開店中の本屋を借景に観客が芝居の世界に参加していくというちょっと変わった趣向の芝居になりそうで、初めてこの集団を体験したい人にはお薦め。平日だけの公演ということで私は行けそうにないのが涙涙なんだけどね。


 桃園会「どこかの通りを突っ走って」★★★は昨年の「うちやまつり」に引き続いての東京公演第2弾。深津篤史の新作ということで今回はどんな作品に仕上がっているのか興味津々。「うちやまつり」でもう懲りたという皆さん。深津の作品は確かに分かりやすいとはいえないけど「うちやまつり」よりは分かりやすいにも多いから懲りないで。といったら、もっと難解だったりして(笑い)。